糖質制限をすると筋肉が減るのか?栄養学と生化学の教科書で調べてみた

糖質制限をすると、筋肉を分解して出来たアミノ酸を糖新生のために利用するため筋肉が減る、という説があります。

糖質制限反対派の人たちはこの説を持ちだして、ほら、だから糖質制限は危険だ!と主張します。

本当のところ、一体どうなのでしょうか?

一応、自分の体で体組成計で測ってみましたが、決着がつくような結論は得られませんでした。

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では、ネットやテレビ、雑誌などで紹介されている記事ではなく、一度、教科書で確認してみましょう。

糖新生で筋肉が分解されるのは本当だった。しかし・・・

生化学の教科書である

「これだけ!生化学」(秀和システム)

=>http://www.shuwasystem.co.jp/products/7980html/4226.html

を見ますと

糖新生で使われるアミノ酸は主に筋肉を分解して得られます。そのため、絶食などの無理なダイエットを行うと筋肉が減少し、新陳代謝が減少してしまいます。そのため適度な食事と運動を組み合わせることが重要といえます。

「これだけ!生化学」(秀和システム)P169より引用

とあります。

これを読んで「ほら、筋肉が分解されるじゃないか」と早合点してはいけません。

よく見てください。

絶食などの無理なダイエットを行うと筋肉が減少

「これだけ!生化学」(秀和システム)P169より引用

と書いてあります。

絶食などです。

山で遭難したりしたら生命維持のために、筋肉が分解されてしまうことがあるのはやむを得ないことでしょう。

まずは命が大事ですから。

絶食って、そういうレベルのことなんじゃないでしょうか?

糖質制限って、絶食レベルでしょうか?

全くそんなことありません。

糖質は制限しますが、タンパク質と脂質は十分に摂りますから。

「これだけ!生化学」(秀和システム)のこの記述は正しいと思いますが、糖質制限への反論の根拠としては使えません。

糖新生で筋肉が分解される前にアミノ酸プールとして蓄えられたアミノ酸が使われるのでは?

絶食などの無理なダイエットを行うと筋肉が減少するのは分かりました。

では、絶食せずに糖質だけ制限してタンパク質や脂質を十分に摂った場合はどうなるのでしょうか?

「オールカラー しっかり学べる!栄養学」(ナツメ社)

=>http://natsume.co.jp/book/index.php?action=show&code=005275

によれば

血液や各組織に存在してたんぱく質代謝に利用される遊離アミノ酸を、アミノ酸プールという。

「オールカラー しっかり学べる!栄養学」(ナツメ社)P85より引用

とあります。

そして

体内で最も大きなアミノ酸プールは骨格筋で、全アミノ酸プールの50%以上を占め、骨格筋1kgあたり3〜4kgの遊離アミノ酸をプールしているといわれている。

「オールカラー しっかり学べる!栄養学」(ナツメ社)P85より引用

のだそうです。

そして、このアミノ酸プールを増やす要因として、食物からのたんぱく質摂取(同P86)が挙げられています。

なんだ、食事としてたんぱく質、食べればいいんじゃん。

糖新生ではたしかにアミノ酸が材料に使われますが、アミノ酸プールにアミノ酸が十分にあればそちらが糖新生に使われるはず。

そしたらわざわざ筋肉を分解するはずが無いですよね。

そもそも糖新生はアミノ酸だけが材料ではない

先ほど挙げた「オールカラー しっかり学べる!栄養学」(ナツメ社)を見ますと、このようにあります。

糖新生は肝臓と腎臓で行われ、その素材となる成分は、アラニンを代表とする糖原性アミノ酸のほか、乳酸、グリセロールなどである。

「オールカラー しっかり学べる!栄養学」(ナツメ社)P92より引用

アラニンっていうのは筋肉で代謝されて合成されるアミノ酸のこと。

糖新生はアミノ酸以外にも、乳酸やグリセロール(中性脂肪を分解してできたもの)を材料とするのが分かりますね。

糖質制限をするとインスリンの分泌が抑えられるため、中性脂肪の分解が促進されます。

中性脂肪が分解されるとグリセロールと脂肪酸になります。

このグリセロールが糖新生に使われる、というわけです。

糖新生で筋肉が分解されるので危険という主張は、中性脂肪が分解されて出来たグリセロールが糖新生の材料になることを無視していますね。

どうしてこんな誤解が?ボディービルダーのような筋肉を付けたい人がダイエットするのか、肥満人がダイエットするのかの違い

ボディビルダーのような筋肉を付けたい人の場合、筋肉が1gでも減少するのは避けたいという心理が強く働くのでしょう。

筋肉のキレを出すために脂肪を落としたいときに、筋肉まで落ちてしまっては困りますからね。

そのため、筋肉が分解される可能性を少しでも減らすために、糖新生で筋肉が分解される説が気になる気持ちは分かります。

しかし、私たち肥満人の場合は体脂肪を減らすのがまず一番です。

筋肉が減ると言われても

  • じゃあ、筋トレも同時にすればいいんじゃない?
  • たんぱく質、摂取すればいいんじゃない?

程度の認識です。

ボディビルダーのような体を目指している人からすると、1kg筋肉が減るのは大事件ですが、肥満人からすると体脂肪を1kg減らすのが目的になります。

実際、

=>ダイエットすると筋肉が減るって本当?10kgダイエットした時点で筋肉量を測ってみた

ダイエットすると筋肉が減るって本当?10kgダイエットした時点で筋肉量を測ってみた
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糖質制限でダイエットすると筋肉が減ってリバウンドしやすくなる、という意見があります。 糖質制限ダイエットを始めて7ヶ月。 ...

ここで私が10kgダイエットした時のように、筋肉が2.7kg減って体脂肪も7.5kg減った場合、どうでしょうか。

ボディビルダーのような体を目指している人からすると筋肉が2.7kg減ったことは許しがたいことでしょう。

しかし肥満人の場合7.5kgも脂肪が減って良かった、となることでしょう。

人それぞれ何を重視するかで評価が変わってくるという背景が、糖新生が筋肉を分解して危険という説の背景にあったのではないでしょうか?

まとめ

糖新生で筋肉が分解されるのは、絶食など無理なダイエットした場合であって、たんぱく質や脂質を十分に摂取する糖質制限には当てはまりません。

また、肥満人がダイエットするのか、筋肉を付けたい人が余計な脂肪を落とすのかによっても重視するポイントが変わってきます。

主張する人がどのような立ち位置にいるかを見極めて判断するもの大切です。

最後まで読んでいただきまして、ありがとうございました。

ではまた。

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